2014年6月10日火曜日

MS-75CH スピーカー分解日記 ~メンテナンス性とコストとの兼ね合い~

おはようございます。

今回は電子工作、修理系の記事になります。

半年ほど前、筆者のPCで使っているスピーカーが壊れてしまいました。(某EのつくPCサプライメーカーの製品です。中国製。)
具体的にいうとLchから音が出なくなり、Rchだけのモノラルになってしまい、精神衛生上気持ち悪くて使い物にならない、といった症状です。
というわけで、(どういうわけだ)暫くタンスの肥やしになっていたものの、この際に分解して修理してみよう、上手く行ったら儲けものだ、という話です。

生憎筆者はオーディオ重視な人(友人です。DTMしないのにフォーンプラグが挿せるRolandのUSBオーディオインターフェースを使って音楽聴いてる友人です。)ではないので、PCで音楽を聴く際も今でもオンボードのRealtekチップで音楽の再生、録音をしています。PC電源からアース線は出ているものの、筆者の家のコンセント(ちなみに、コンセントって言うのは和製英語で、英語ではOutlet(アウトレット)と云うそうです。アウトレットといえば私たちが意味として真っ先に思い浮かべてしまうのは買い物関係のバーゲンセール的な意味合いでしょうか…(^^;))にはアース線を接続する端子が無いため、無音時でも以下のスクリーンショットのようにノイズが走っています。



WaveSpectraで計測した無音時の全てのオーディオ信号キャプチャの図。




幸い筆者の耳は高級な耳ではないので、4kHzと12kHz付近に高調波と思わしきノイズが走っていますが、聴こえません。(何
上図のレベルメーターを見る限り、一番ひどくても無音状態で -110dB です。レベルメーター上ではLchとRchで-80dBですか。
PCマザーボード上のあんな小さいオンボードサウンドチップでもこんなにS/N比が向上したなんて、侮りがたしです。



壊れたスピーカーユニット(左)
左スピーカーユニットはケーブルが1本しか生えていません。
よって、左から音が出ないということは、考えられる原因として

  • 右スピーカーユニットから左スピーカーユニットに音響信号を伝える線が断線している。
  • 右スピーカーユニットの回路故障。


恐らくこの2つでしょう。

下に行くほど重症です…。

電源トランス、サウンドカードからの信号入力、増幅、イコライザ、出力を司る、いわば基幹部分は全て右側スピーカーユニットの方に押し込まれています。

それでは、早速本題の分解に入っていきたいと思います。

まずは左から。
左スピーカーユニットを分解したところです。
左スピーカーユニットの分解は呆気ないほど簡単に終わります。
赤丸4箇所のネジを外して、蓋をテコの原理でコジってやれば、うまく分解できます。

上記写真左側に穴がありますが、これはバスレフ型スピーカーなので、低音がちゃんと流れるように設計してあると思われるダクトです。
一般にこのような安価なバスレフスピーカーはこういった機構により、低音を出す仕組みになっています。スピーカーとしての出来はS/N比とスピーカー本来の性能、それを固定し、取り囲むエンクロージャー、バスレフダクトなどで全く違うものに化けたりします。(オーディオに詳しい方へ:間違ってたらごめんなさい。)

で、左スピーカーユニットエンクロージャーの蓋を開けるとこうなります。

共振を防ぐためか、蓋と箱の間に粘着性のパッキンが入っていたので分解に少し手間取りました。
意外と素直に、エンクロージャー部分は外観を左右するお面(このスピーカの場合木目調パネル)の内部にMDF系素材(繊維板)を張っていて、ある程度音作りをしている感が感じられます。


バスレフダクト部分はこんな感じです。

なんと、小さなボイド管みたいな硬い紙の筒をそのまま接着です。ねじ止めで特性がばらつかないようにとの配慮でしょうか。


さて、色々とうんちくを語ったところで、次、右側スピーカーユニットの分解に入ります。


コイツはかなり厄介です。


赤丸部分を外すのは左スピーカーユニットと同じですが、右側スピーカーユニットには「とある部品」が入っているため、2か所だけ空転するネジで留められています。(上図緑○参照)


さて、その「とある部品」とは電源トランスです。

気になるスペックは…
入力:AC100V 50~60Hz
出力:AC9V 0.4A



だそうです。ここで処理された9Vの交流電源をブリッジダイオードと電解コンデンサを使って整流するのですね。
実際は少し違うでしょうが、回路図にしてみるとこんな感じだと思います。


  1. まず、①で図示したブリッジダイオード(ダイオードが4つ繋がった部品です。ダイオードの「逆方向には電源が流れない(実際は数uAほど流れるのですが…)」)で交流を全波整流します。
  2. 次に、②で示したコンデンサ(キャパシタとも)でのダイオードブリッジから流れてきた激しく波打つ全波整流を蓄電しつつ、放電することによって、脈流(リップル)を(ある程度)除去し直流に変換します。この時部品が熱くなる熱エネルギーが電源回路の損失になります。


昔のでっかくて重たいトランス付のACアダプタはまさにこれと同じような作りなので(上の回路図にはトランスを書いていませんが、)、電源変換とは別に結構な電力を無駄に喰ってしまいます。
最近はスイッチング電源に駆逐されつつありますね。

オシロスコープが無いから何とも言えませんが、大体のAC-DC変換は上記のような感じです。(スイッチング電源は話がややこしくなるからこの記事では割愛します。)

ちなみになんでこの構造だと断言したのは、基板の部品配置がまさに見た感じこれとそっくりだったからです。下図参照。
高耐圧のダイオード(1N4007 耐圧1000V, 1A)4個(詳細はググってみてください)、16V 2200uFの電解コンデンサがでかでかと。
間違いなく例の回路ですな。

実はこの回路のダイオード、ブリッジダイオードという、ダイオードが4個1組になってモールドされた部品を使うともっとシンプルになるのですが、部品代がダイオード4つで構成するより高くつくので採用しなかったのでしょう。

調べてみたところ、置き換え出来そうな600V, 4Aのブリッジダイオードは100円近くします。それなら某電子部品通販店で1N4007を1本1円で(個人ではこれが最安値限界)大量に買ってダイオードブリッジを形成すると1つあたり4円近くまで下がります。

部品点数こそ増えるものの、ここで90円近く節約できました。

こんな感じで、理由を考えてみると色々と新しい発見があります。これも電子工作の醍醐味だと筆者は思っています。





少し話がそれました、本題に戻りましょう。


3本生えているケーブルは、上記写真左上の赤丸から下に向かって
AC100V
3.5mmミニプラグ
左スピーカーユニットへの音響信号

となっています。


さて、分解が無事に終わったところで、ようやく本題に入ります。(相変わらず前書きが長いのはご愛嬌)

問題はコヤツです。
メーカー不詳のコンデンサやら、美味しそうなものがゴロゴロしていますが、
なんとこの基板、取り外せません。

オーディオ処理基板がネジでかなり奥の方に据えつけられており、基板を外すことが出来ません。

おまけにコンデンサ群などはあろうことか、ホットボンドのような接着剤で封止されています。
メンテナンス性など微塵も考えていないようです。
これじゃ修理も何もできません。

おまけに駆動中はかなり発熱すると思われる アンプIC についているヒートシンクがこれ以上ないほど簡略化されたへぼいヒートシンクになっています。
まあこれでも5年持ったんだからイイほうなんだけど。


さて、コストダウンのためにメンテナンス性が犠牲になって、余計にガラクタを増やしてしまった筆者ですが、これからどうしようかな~、と考えているところです。


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